対デジタル・ディスラプター戦略

さて、今回は

IMD教授のマイケル・ウェイドらによる著作、

「対デジタル・ディスラプター戦略」です。

 

対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

 

デジタル技術を用いて、

破壊的イノベーションを起こし、

既存市場を大きく変えるベンチャー企業が、

様々な業界に登場しています。

 

そんな中で既存企業が、

ディスラプションに耐え、

逆に企業として成長していくために何が必要か

ということを説いた本です。

 

”破壊的イノベーションを起こすベンチャー企業側”

に関する書籍も非常にたくさんありますが、

コンサルティング会社に勤務するものとして、

一緒に仕事をするのは既存企業が、どのように生き残って行くべきか

という内容は直接的にではないにしろ業務に落とし込めそうな内容でした。

 

この本は、シスコとIMDが共同で設立したDBTセンター(Global Center for Desital Business Transformation)での調査研究をもとにしています。

 

概要としては、まず著者はデジタル化がもたらす3つのバリュー

・コストバリュー

 →価格を大幅に下げることに代表される経済的利益の破壊的イノベーション

・エクスペリエンスバリュー

 →顧客に新しい購買/消費体験を提供する破壊的イノベーション

プラットホームバリュー

 →従来にはないネットワーク効果を提供する破壊的イノベーション

を提示します。

 

このあと、これに対応するために既存企業が取るべき4つの戦略を示しますが、

3つの新しいバリューと4つの戦略を繋ぐものとして、

・バリューバンパイア

 →自らの競争優位を武器に市場全体の売上 and/or 利益を縮小させてしまう企業

・バリューベイカンシー

 →デジタル・ディスラプションによって生じた市場の空隙で利益を享受できるチャンス

を提示します。

 

4つの戦略のうち、2つは防衛的戦略、残る2つは攻撃的戦略です。

まず、防衛的戦略(バリューバンパイアから自社を守る戦略)としては

・収穫的戦略

 →ディスラプションに対し、自社の既存資源を活用することで既存事業を守る戦略

・撤退戦略

 →自社の中核事業を諦め、収益を得ることができるニッチ分野に集中する戦略

 

続いて攻撃的戦略(バリューベイカンシーを追求する戦略)としては

・破壊的戦略

 →既存の中核事業に対して自らディスラプションを起こす戦略

・拠点戦略

 →進行するディスラプションと対峙するポジションを市場内に確保する戦略

 

書籍の中でも述べられているように、

現在の変化のスピードを思えば、

プランニングをしている時間はありません。

 

だからこそ、これらの戦略を実施していくための能力を

組織として身につける必要があります。

 

その能力とは、

・ハイパーアウェアネス(察知力)

・情報に基づく意思決定力

・迅速な実行力

を土台とするデジタルビジネス・アジリティです。

 

この話を日本企業の経営陣にしても、

”ピンとこない”というのが現状かもしれません。

 

その意味で、実際の業務に落とし込むには、

もう一段咀嚼が必要かと思います。

 

DBTセンターの取り組みはこの本が執筆された段階では

まだ道半ばだとのことなので、本の続編が楽しみです。