第4次産業革命とIndustry4.0
GW前にプロジェクトの関係で、
第4次産業革命、Industry4.0などを整理していました。
この分野、書籍、レポートごとに解釈が様々な上に、
GEが中心となって提唱したIndustrial InternetやDigital Transformation(DX)など、
関連するキーワードも多く、複雑なので今時点での整理をしてみたいと思います。
第4次産業革命とは何か
第4次というからには、第1次〜第3次産業革命があるはずです。
一般的に、これまでの産業革命は下記のように整理されています。
(平成29年版 情報通信白書より)
第1次産業革命はみなさんご存知の通り、歴史でも習うイギリスでの産業革命です。
第2次産業革命は電気・石油を用いた重工業の発展を指しますが、その代表的な製品は大量生産を実現したT型フォードです。
第3次産業革命はインターネットやICT技術の活用による製造現場での自動化です。産業用ロボットの導入なども含まれ、日本の自動車産業発展の要因でもあります。
さて、では第4次産業革命とは?
明確な定義がないのが現状ですが、ざっくり
リアルとデジタルの融合による、『高効率化』と『新たな価値創出』の実現
と言えるかと思います。
狭義の第4次産業革命と広義の第4次産業革命
もともと第4次産業革命の概念が示されたのは、
2010年にドイツで開催された、ハノーバーメッセ2011でドイツが発表した、
"Industrie4.0"です(ここではあえて、ドイツ語表記しています)
この中でドイツが提唱したのは、
『サイバーフィジカルシステム(CPS)によるスマート工場の実現』です。
この概念はかなり限定的ですので、ここでは狭義の第4次産業革命と呼びます。
これに対し、各国が様々な施策を発表します。
(平成29年版 情報通信白書より)
内容はそれぞれ異なりますが、
必ずしもドイツが提唱したスマート工場に限定されるものではありません。
日本が2017年に示したConnected Industriesもこの流れに沿うものです。
これら全てを包含するものが広義の第4次産業革命です。
(=リアルとデジタルの融合による、『高効率化』と『新たな価値創出』の実現)
この概念に最も近い概念を示しているのが、
アメリカのGEが中心となって発表されたインダストリアル・インターネットです。
「インダストリアル・インターネット」によって、先進的な産業機器、予測分析ソフトウェアと意思決定をする人々が結び付きます。この結果、医療技術の向上、鉄道や航空機における輸送プロセスの変革、発送電における効率的なシステムの登場、などを通じて多くの産業における生産性の向上を実現します。(GE Japan HPより)
書きぶりとしては、生産性の向上に寄っていますが、GEが手がけたエンジンのIoT化によるサービス提供などをみれば、新たな価値提供を行っていることがわかります。
Digital Transformation(DX)とは
もう一つ、厄介な概念としてDigital Transformation(DX)というものがあります。
もともとはスウェーデンにあるウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱したもので、
「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」
としています。
最近は少し具体的に捉えられていますが、その捉え方は様々で、
IT専門調査会社のIDCでは
企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新たな製品やサービス、ビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること(IDC Japan HPより)
としています。
(NEC HPより)
第3のプラットフォームという部分が若干腑に落ちないので、少し広く
企業がデジタル技術の導入により『高効率化』、『新たな価値の創出』を実現すること
と捉えています。
ただし、単独のデジタル技術を導入するというよりは、複数のデジタル技術を組み合わせ、企業の大幅に変革するというイメージです。
(広義の)第4次産業革命とDigital Transformationの違い
さて、最後に第4次産業革命とDigital Transformationの違いですが、
最も大きな違いは、第4次産業革命はあくまでも、"リアルとデジタルの融合"が鍵であることです。
一方、Digital Transformationは必ずしも"リアルとデジタルの融合"を必要としません。
細かく厳密に見ていくと、似通う部分もあると理解していますが、
ざっくりと分けるとこのような形かと思います。
最後に
少し長々と書いてしまいましたし、
内容としても大きな変化の真っ只中で、私自身も勉強中です。
情報通信白書など、政府の資料は非常に参考になります。
一方、政府資料にDigital Transformationという言葉が出てこないあたりをみると、
Digital Transformationの概念は、日本ではまだメジャーではないようにも思います。
ちなみに下記の本も非常に参考になります。
(唯一、第6章の日本企業が進むべき道は、腑に落ちない内容が多かったですが)