対立の世紀 US vs THEM

"われわれ" vs "彼ら"の構図

久々に本の内容に関する更新です。

先日まで、イアン・ブレマーの最新作、「対立の世紀」を読んでいました。

対立の世紀 グローバリズムの破綻

対立の世紀 グローバリズムの破綻

 

 

以下、私見であらすじではないので悪しからず。

 

第二次世界大戦以降、東西冷戦がありつつも、

世界は欧米諸国主導のもと、グローバル化を推し進めてきました。

 

そのグローバル化が、10億人以上を貧困から救ってきたことは事実です。

しかし、

グローバル化の恩恵は一部のエリート層が受けている」

「自分たちは恩恵を受けるに至っていない」

と感じている層がの不満が、拡がり、

目に見える形となって現れたのが、

アメリカのトランプ大統領の誕生であり、イギリスのEU離脱です。

 

この構図はまさに、

グローバル化の恩恵を受けられない"われわれ"

vs

グローバル化の恩恵を受けている"彼ら=エリート層"

です。

 

中間層vsエリート、非移民vs移民、左派vs右派、、、

この構図は至る所にあります。

 

情報化社会が偏った見方を助長する

SNS、webサイトでは、私たちの閲覧履歴を元に、

私たちの好みの記事を優先的に表示してくれます。

 

右派寄りの人のタイムラインには、徐々に右派に肯定的な記事が、

左派寄りの人のタイムラインには、徐々に左派に肯定的な記事が表示されます。

 

いつの間にか、

右派"寄り"だった人のタイムラインは、右派な肯定的な記事しか表示されなくなり、

左派"寄り"だった人のタイムラインは、左派な肯定的な記事しか表示されなくなり、

 極端に偏った意見が生まれます。

 

例え、隣の家同士の人であったとしても、

触れている情報が全く異なる、ということが起こります。

 

次第に、"われわれ"は"彼ら"を、全く理解できない状況に陥ってしまいます。

 

破綻の危機を迎えるのは、新興国である

 この主張が、本書の一番面白いポイントだと思います。

"われわれ"vs"彼ら"の構図に加えて、大きな問題となるのが技術革新です。

 

これらの影響をより強く受けるのは、新興国です。

従来、生産年齢人口が総人口に占める割合が増加していく状況は、

"人口ボーナス"と呼ばれ経済成長のドライバーとされてきました。

 

しかし、技術革新によって人々の職が代替される世の中において、

生産年齢人口が多さはすなわち、失業者が大量に生まれることを意味します。

 

多くの若者が失業した状況が生まれれば、彼らの不満の矛先は

政府や一部のエリート層に向けられる可能性があります。

ここで"われわれ"vs"彼ら"の構造が生まれます。

 

このような構造を生まないためには、若年層に対し教育を行い、

技術革新による失業を防ぐ必要があります。

 

しかし、それだけの投資ができる新興国は多くありません。

その中で各国はどう対応していくのか。

 

本書の中では具体的な解決策は示されませんでしたが、

もはや一国だけで解決していくことはできないです。

 

結果的に、グローバル化が求められるとすれば、皮肉な結果です。

いずれにせよ、数年のうちに方向性が見えるのかもしれません。