マッキンゼーが予測する未来

さて、約2ヶ月渡って読んでいた本を読み終わりました。

 

マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

マッキンゼーが予測する未来―――近未来のビジネスは、4つの力に支配されている

 

 主張としてはそこまで目新しさはないのですが、

具体例や統計が非常に充実していて、この辺りはさすがマッキンゼーといったところでした。

 

具体的な内容としては、

第I部で大きな4つのトレンド(破壊的な力)

 ・経済の重心の移動(西欧からアジアへ)

 ・技術発展によるインパクトの拡大と加速

 ・地球規模での高齢

 ・資本や情報の「流れ」の高まり

をもとに、

『我々の直観をリセットしなければならない』

という主張をした上で、

第Ⅱ部で6つの個別課題と対応措置を示しています。

 

第Ⅰ部と第Ⅱ部のつながりが若干弱いですが、

参考事例も含めて非常に参考になる内容でした。

 

さて、これだけ変化が早い時代にあって、

今までの経験に従い、直観的に判断しても上手くいかず、

直観はリセットし続けなければならないことは言わずもがな。

 

にも関わらず、それができないのは、

『人間は現状維持バイアスが強い』

すなわち、例え証拠を示されたとしても、自らの仮説やアプローチを変えることに抵抗してしまうためです。(P.365より)

 

そんなバイアスを取り払い、この急速な時代の変化に対応していくための一つの方法が、

『リセットする触媒』

を近くにおくことです。

本書中の例が面白かったのですが、

長らく、人間が1マイルを4分を切って走ることはできませんでした。

しかし1945年に4分を切るランナーが出てきて以降、

3年間で16人ものランナーが1マイルを4分を切って走ったのです。

 

長らく"直観的に"無理だと思われていたものをリセットしたのです。

 

私自身はコンサルとして大企業の方と関わることが多いですが、

たまにベンチャーに勤める友人と会うと、まさに直観がリセットされます。

 

逆に、自分自身も周囲の人の直観をリセットできるような触媒になりたいものです。

 

さて、新米コンサルタントと言いつつ、2年目に突入してしまいました。

2年目も頑張っていきます。

AI vs 教科書が読めない子どもたち

AIで東大入試に挑戦するプロジェクトを率いておられた、

数学者の新井紀子さんの著書です。 

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 

この本の主題は、

"AI(正しくはAI技術)は、人間の仕事を奪うか?"というものです。

結論としては、端的に言えば「置き換えられる仕事はあるものの、残る仕事もある」です。

 

なぜか?

AIはあくまでコンピューターであり、論理、確率、統計で表現できるものしか扱えないのです。

言い換えれば、AIは"意味"を理解することができない、

本の中の言葉を借りるなら、「私はあなたが好きだ」と「私はカレーライスが好きだ」という2つの言葉の違いをAIは本当の意味で理解することができないのです。

 

しかし、裏を返せば論理、確率、統計で表現できる仕事、処理できる仕事は置き換えられる可能性がありますし、

もし人間がAIと同様に"意味"を理解できないのであれば、AIに対して優位であると言えないのです。

 

著者は中高生を対象に大規模な読解力を測定するテストRST(Reading Skill Test)を実施し、

・中学校を卒業する段階で約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない

・学力中位の高校でも半数以上が内容理解を要する読解ができない

と言ったことを明らかにしています。

読解ができないということは、本書のタイトルにもある通り、教科書が読めないということに他なりません。

このような状況では、AIが意味を理解できないまでも人間の仕事は代替されていく可能性があります。

 

本書でも主張されている通り、AIによって労働力は二分される可能性が高いです。

現時点で、その二分のラインがどこに、どのように引かれるかは定かではありません。

しかし、ラインを下回る人は導入コストが低下していくAIと職を争うことになります。

 

そのような状況では、

低賃金でも働かざるを得ない→その賃金をAIの導入・運用コストが下回る→さらなる低賃金で働かざるを得なくなる

という悪循環が待っています。

 

私は楽観主義ですし、実際に本書ではそのような世界で人間が生きていく術として

ブルーオーシャンで戦うことが提示されています。

場合によってはベーシックインカムの導入が提唱されることもあります。

 

これらにとどまらず、考え得る対策は多々あるでしょう。

しかし、AIの原理を知り、何ができて何ができないかを理解しなければ、

対策を考える上でのスタート地点にも立てません。

 

 

その意味でコンピューターの根本である、数学的な観点から

AIにできること、できないことを整理されている本書は一読の価値があるのではないでしょうか。

座右の"問い"

最近、さすがにプロジェクトに追われ、

久々の投稿になってしましました。

 

最近始まった某プロジェクトに関連して、

大学時代に買ったgreenzの本をパラパラと読み返していました。

 

ソーシャルデザイン (アイデアインク)

ソーシャルデザイン (アイデアインク)

 

 

この中で目に留まったのが、

座右の"問い"というワード。

「好きだった自分ってどんな自分?」(山口絵里子さん)

「それは本当にその地域の人のためになることか?」(山崎亮さん)

 

自分にとって、大事にしている問いは

「今、この状況を楽しめているか?」

ですかね。

 

もともと、高校の部活の大事な試合で、

「緊張せずに楽しもう」

と思ったのが始まりですが、未だにビジネスの場面でも、

特にきつい時なんかは、楽しめているか?と問いかけているような気がします。

 

あなたにとって、座右の問いは何でしょうか。

 

おやすみなさい。

法事でのお坊さんの説法が勉強になったので。

今日は、祖父の七回忌でした。

自分自身は信仰心が強いわけではないですが、

この祖父の法事に来てくださるお坊さんの説法が、毎回結構勉強になります。

 

今日の内容は、

  1. そもそも般若心経とは?
  2. 四苦八苦の話
  3. いろは唄の話

という感じでした。

 

1.そもそも般若心経とは?

そもそも般若心経は略称で、曹洞宗では『摩訶般若波羅蜜多心経』と言うそうです。

=====

摩訶=大きな、偉大な

般若=知恵

波羅蜜多=(サンスクリット語の2つの単語が合わさっていて)彼岸に達する

心経=エッセンス(要約)

=====

と分解できるので、彼岸に達するための偉大な知恵のエッセンス

という意味になります。

般若心経はブッダの弟子の一人であるシャーリプトラに観音菩薩が教えを説くという内容です。

何の教えを説くのかというと、この世のものは”空であり”(=実体がなく)、

移り変わっていくものであるということです。

諸行無常という言葉にも通ずると思います。

 

2.四苦八苦の話

そんな世の中で、人間は様々な苦を経験します。

その苦とは、

「生・老・病・死」(生きること、老いること、病むこと、死ぬこと)の四苦に、

愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五陰盛苦」を合わせた八苦です。

 

3.いろは唄の話

これは余談でもありますが、

「いろはにほへと〜〜」で知られるいろは唄は、

=====

いろはにほへと ちりぬるを
わかよたれそ つねならむ
うい(ゐ)のおくやま けふこえて
あさきゆめみし  え(ゑ)いもせす 

色は匂へど 散りぬるを
我が世誰ぞ 常ならむ(ん)
有為の奥山 けふ(きょう)越えて
浅き夢見し 酔ひもせず

=====

となり、色鮮やかに咲く花もいつかは散ってしまう〜

という意味になります。

すなわちこれも諸行無常であるという意味で、実は仏教の教えに通じるんだそうです。

 

かなり端折って断片的に記載してしまいました。

お坊さんって話うまいですよね。当たり前ですが。笑

経営の針路

年末から年始にかけて読んだ本ですが、

「経営の針路」

マッキンゼーの元日本支社長 平野さんの著書です。 

経営の針路―――世界の転換期で日本企業はどこを目指すか

経営の針路―――世界の転換期で日本企業はどこを目指すか

 

 

1990年の冷戦終結から、現在までの世界的な経済と企業経営の変化が

非常に簡潔にまとめられていて、良い1冊でした。

また、なぜ日本企業がその変化に対応できなかった(対応できていない)のか、

トランプのアメリカ大統領就任を代表やイギリスのEU離脱などに代表される、

ナショナリズムの台頭という近年の流れに対して企業がどう行動すべきかと言ったことに関しても言及されています。

 

大きな流れとしては、冷戦終結に伴い、

1.グローバル経済の形成と拡張

2.キャピタル経済の拡大

3.デジタル経済の勃興

が起こりました。

 

少し詳しく見ると、

1.グローバル経済の形成と拡張

 ・冷戦終結に伴い、旧東欧諸国が西側の民主主義・自由主義の枠組みに取り込まれる

 ・新興諸国の経済が先進諸国の経済と連結され、拡大

 →結果的に経済におけるグローバルの枠組みが広がっていく

 

2.キャピタル経済の拡大

 ・サッチャーレーガンによる市場原理を重視する施策の展開

 ・通貨供給量をコントロールするマネタリスト政策

 →(市場原理を重視する)新自由主義の拡大と金融経済の拡大

 

3.デジタル経済の勃興

 ・軍縮により先端技術や有能な人材が市場に流出

 →インターネットをはじめとするテクノロジーの進展

 

以下は本の内容+私見ですが

この中で、企業は事業が多角化し同時に管理すべきリソースも膨大になっていきます。

すなわち従来のように経営トップがあらゆる意思決定に介在することはできなくなりますし、

そうしようとすれば意思決定のスピードが失われ、競争力を失います。

 

ここで必要なのは、戦略的思考により企業の目指すべき方向性(ビジョン)を共有し、

意思決定権を委譲していくことです。

また、環境変化に柔軟に対応するための組織改革や人という資本を中心に据えた経営が必要です。

日本企業はこれらの部分について、バブル崩壊の影響もあり、

世界のスタンダードから取り残されてしまったのではないでしょうか。

 

 

非常にざっくりと書きましたが、

サクッと読めて、良くまとまっている良書でした。

遅ればせながら、本年の目標

”本年の目標”と書きましたが、

ここ数年ずっと目標としていて、

これから数年もしばらく目標であり続けると思っています。

 

『引き出しを増やす』

 

引き出しが多い人ってどんな人でしょうか。

個人的にこの人は引き出しが多いなぁと思うパターンは大きく分けて2つです

 

1.適切なタイミングで、適切な例を出せる

何かを伝える時、特に正解がない中で何かに納得してもらいたいときや主張するとき、

適切な例(歴史上の事例など)を提示できる人は引き出しが多いと感じます。

 

この例によってどれだけ説得できるかは、

”引き出し×どの引き出しを開けるか(どの具体例を選ぶか)のセンス”

なので、センスを磨く必要もあります。

ちなみに、個人的には安倍首相はセンスがあるお一人ではないかと。

例えば下記の動画の日刊ゲンダイを引き合いに出すあたり。

www.youtube.com

別に自民党の回し者でもなんでもないですが。

 

2.適切な枠で相手の主張を整理して提示できる

相手の話を聞きながら、「要するにこういうことですよね?」ということを、

より一般的(すなわち聞いている人の腑に落ちやすい示し方)なフレームで提示できる人も、

引き出しが多いと感じます。

 

これは特にインプットだけでなく、アウトプットの回数を増やさないと、

身につかないものだと思いますが、

引き出しがたくさんあってこそ、適切なフレームを選べるのではないかと。

 

そんなわけで、今年の目標は引き出しを増やす

ですが、まずはインプットですね。

 

この記事の瀧本さんの話なんかはまさに、

自分の主張に必要な例を引っ張り出している例だと思います。

(今回で言う⒈に相当します)

 

gendai.ismedia.jp

 

仕事の話。先日の新潟県でのJR立ち往生に絡めて。

先週、新潟県での豪雪に伴い、

JR信越線の列車が約15時間に渡って立ち往生し、

乗客400人あまりが列車で夜を明かすという事態になりました。

www.nikkei.com

様々なニュース、意見が飛び交っていますが、

”主な”かつ検証すべき論点は

1.運行可能との判断は適切だったか

2.立ち往生中の対応が適切だったか

の2点です。

 

まず1点目ですが、JRが状況を過小評価してしまった

という報道が大勢を占めています。

 

一方、2点目はかなり議論の余地がありそうです。

ここでは、「乗客を車外に降ろすべきだったか」ということに論点を絞りますが、

個人的な印象としては、

報道が出始めた頃は、「なぜ車外に降ろさなかったのか?降ろすべきではなかったか」という論調が多かったように思いますが、

徐々に、「降ろさないという判断は適切だっただろう」という報道も出てきたように思います。

 

論調が変わってきた理由としては、

「なぜ降ろさなかったか」という部分に対する検証が進んだからです。

逆に言えば、当初の「乗客を車外に降ろすべきだ」という論調は一種感情的に発せられたものと捉えることができます。

 

”なぜ”という点に対して早い段階で記事化していたのは、buzzfeedのこちらの記事かと思います。

www.buzzfeed.com

12日の記事(立ち往生は11日-12日)ですし、内容は不十分かもしれないですが、

視点としてはポイントを捉えています。

 

ここから話を一般化していきますが、

人々が感情的に「◯◯だ、◯◯すべき」と思うことに対して、

それとは違う対応が取られることがあります。

 

そして、その裏には必ず理由があります。

その理由を検証できるかで、確実に議論の深さは変わってきます。

 

以下、半分ほどは先輩の受け売りですが、

例えばクライアントになり得る、ある会社において、

・売上は低下傾向(業界全体としても低下傾向)

販管費に占める人件費の割合が大きい

とします。

 

この時感情的には、「人件費を下げる必要がある」という話になるのですが、

まず、既にその取り組みを行っているのかを検証する必要があります。

(JR立ち往生のニュースでは明らかですが、乗客を降ろしているor降ろしていないの検証にあたります)

 

人件費を削減しているのであれば、

「その上でどんな課題があるのか」を議論のスタート地点にできますし、

人件費が削減できていないのであれば、

「なぜ削減できていないのか」に関して議論ができます。

 

ちなみに、人件費の動き程度は基本的に公開情報(企業のIR資料)から引き出すことが可能です。

 

 

ごくごく当たり前のことなのですが、

”なぜ”と一段掘り下げることで議論の深さは大きく異なります。

 

当たり前のことながら、

ニュースは新聞を作っている人、そこに出ているコメンテーターでも、

十分にできていないということを痛感した今回の一連の報道でした。